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※妄想による二次創作です。ご注意ください。
※「郷巡り編」も造語です。何かと被っても偶然です。
※初めての方はパラグラフ001からどうぞ。
雪国の雪下ろしは重労働である。
田舎の老人は都会の若者より体力があるが、どうしても人手が足りない。
そして、沙都子ハウスには「沙都子」と言う若者が住んでいる。
また、詩音達(作業するのは主に圭一ではあるが)が雪に備えて沙都子ハウスに雪囲いを作ったりしているので、村人達は沙都子ハウスのことはあまり心配していなかった。
沙都子ハウスは老朽化が進んでいる。近頃ではちょっと雪が積もる度にミシミシいっている。しかし、沙都子は家の軋みに気付きながらも口外していない。それどころか「このままつぶれてしまえば良いのに」とさえ思っていた。
一晩で降り積もる量が、家の耐えられる量より少ないなら問題はない。
しかし、今夜は豪雪地方にとっての「大雪」。吹雪の中、大量に積もった雪により、沙都子ハウスは断末魔の悲鳴を上げる寸前だった。
……ダン……ダン……。
沙都子は、ふと目覚めた。
吹雪が窓を叩く音? 詩音主導で圭一が板を打ち付けてくれていたので、吹雪が板を叩く音だろうか。
(ダンダンダン!)
沙都子は「やけに人間みたいな吹雪だ」と感じつつも、布団で寝たままうつらうつらしている。
(ダンダンダン!)
規則的なリズムは眠気を誘う。近頃の沙都子はまどろんでいることが多いが、今夜はやけに眠い様子だ。意識が遠のいていく。
バキバキバキ!!! ベキベキベキ!!!
それは、寝返りを打って眠りの世界に入ろうとした3秒後のことである。
沙都子は「家が崩れるのか」と思ったが、聞こえて来たのは下の階だ。
「まさか、一階の扉が壊れた? でも、どうせ出かけないし別に良いや」
気力のない沙都子は、再びまどろみに沈もうとしていた。
「やりますよ! 園崎詩音はやりますよーーー!!!」
がっしゃーーーん!!!
「沙都子ぉぉぉーーー!!!!!」
「な! に! ご! と!?」
一階からものすごい音がした。
沙都子は家の天井が落ちてくるのかと、頭を抱えて布団の中でうずくまった。
ガッガッガッガッ! ガッガッガッガッ!
ついに雛見沢の鬼が私を殺しに来たのだろうか。すごい勢いで階段を駆け上がってくる。
沙都子にとっては、鬼はある意味待ちに待っていた存在だが、「よりによってこんな吹雪の日に」とぶつくさ言いながら布団の中でまどろむ沙都子。
ガチャ、ガチャ。バタン!
鬼は2階の扉のカギを開け、扉を開けた。鬼が鍵を持っている?
「沙都子!!! 助けに来ましたよ!!!」
「キャー! 食べないでくださいまし―!!!」
二人とも同じくらいの声で絶叫したが、お互いに相手の言ったことを理解することができた。
「詩音さん……どうしてここに?」
目を見開く沙都子。雪まみれの詩音を見て事態を察する。
「いいから! この家はもうだめです! すぐに外に出ます! 40秒で支度して!!」
沙都子は、一息で跳び起き、そのままの恰好で防寒着を羽織る。
そして、押し入れを開ける。こんなこともあろうかと準備してあったリュックと靴が入っている。素早く靴を履き、リュックを背負い、土足のまま玄関に向かう。
「おーっほっほっほ。準備できましたわ! 準備が早すぎて時間が余ってしまいましたわ!」
「それだけ元気があれば大丈夫な様ですね。さぁ、早く葛西の車に乗って!」
「この吹雪の中を、葛西さんの高級車で車で来れたんですの?」
沙都子は、詩音に疑問を泣けかけながらも、詩音を置き去りにする形で階段を風の様に駆け降りる。
一階のサッシは外から破られ、中にはもう大量の雪が入りこんでいた。
沙都子は、おそらく詩音がやったであろう惨状に「やり過ぎ」と思いつつも、外に止まっている車に乗り込む。
「変わった車ですわね」
吹雪でよく見えなかったが、いつもより車高が高く、いつも葛西が詩音を乗せている車ではないことだだけは分かった。
「大丈夫ですか沙都子さん? さぁ、その奥の席に座ってください。温かいコーヒーも在りますから、詩音さんに貰って飲んでください。ああ、シートベルトも付けてください」
「葛西さんが運転してきましたの?」
ビュオーーー!!! バタンッ!
詩音が扉を閉めると、吹雪の音は大分静かになった。
「葛西、出して!」
「詩音さん。シートベルトを」
「はいはい分かりました! 早く出してください!」
程なく、車がゆっくり動き出したその時、間一髪、バキバキと音を立てて沙都子ハウスが倒壊したのが見えた。
→ 009へ行け
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